バランタインとゴルフ 文・大竹聡

バランタイン・チャンピオンシップについて

『バランタイン・チャンピオンシップ』は2008年より欧州PGAツアーに加わりました。

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行きつけのオーセンティック・バーで飲んでいて、ゴルフの話になったことがある。
きっかけは、その店の壁にかけてある1枚の絵だった。
田舎のコテージを思わせる家の居間に薄日がさしていて、そこに、ニッカボッカにジャケット姿の紳士が立っている。壁にはゴルフのクラブが立てかけてある。ただそれだけの絵であって、これまでに何度も見てきたはずなのに、その日はなぜか、気になった。

「この光景が好きでしてね」
店のマスターが、じっと絵を見ている私に言い、私は質問を返した。
「ラウンドを終えて、帰ってきたところかな。だとするとこの薄日は夕方なのか」
「そう思いますね。今まさに帰ったところでしょう」
絵の中のテーブルには、ウイスキーのボトルとショットグラスが置かれている。
「それで、クラブをしまうのももどかしく、立ったままでさっそく1杯飲むわけですか」
「グラスまで用意しているところがニクイでしょ。きっと、コースに出る前にセッティングしていたんだと思いますよ」
「なるほど、相当なウイスキー好きだ。それにしても、1枚の絵から想像が膨らみますね。この服装からしてイギリス紳士ですかね」
「イギリスはイギリスでも、スコットランド人ではないでしょうか」
「へえ、そこまでわかりますか。マスターすごいな」
「ウイスキーもゴルフも、発祥はスコットランドですからね。この紳士もスコッツだと思って眺めたほうが、絵がより楽しくなるような気がするんですよ」
紳士は、上着を脱ぎもせず、タイを緩めることもしないままに最初の1杯をくいっと飲むのではないか。いやそれとも、ゆっくりと椅子に腰を下ろし、窓の外の夕暮れに乾杯をしてから、香りを嗅ぎ、啜るようにして飲むのだろうか。気がつくと、絵の中の光景が動き出すような気がした。

1960年代当時のゴルフトーナメントの様子

「この紳士、ひょっとしたら、すでに少しばかり酔っているのかもしれませんよ」
カウンターについていた常連客が会話に加わってきた。この人は、スコッチ好きが嵩じて、一時スコットランドの文化や歴史に入れあげた人である。それはどうしてと問う目線を受止めてから、こう続けた。
「1ホール終るたびに1オンス半ほどのウイスキーを飲む。そうすると、18ホールを終えたときにちょうど1本のウイスキーが空になる。それで、ゴルフは18ホールになったという説があるんです」
私は即座にマスターに聞いた。
「マスター、1オンス半ってどのくらい?」
「1オンスを28グラムとして単純に計算すると42グラム。まあ、40グラムとして、それは40mlということだから、18をかけると、そう、ちょうど720mlですね」
「1ラウンドの間に、1本やっつけてしまうのか。それはすごいや」
常連さんは私の言葉をすぐに拾ってくれた。
「スコットランドの冷涼な気候と強い風雨のことを思えば、それほど大袈裟な話ではないのかもしれませんよ」
「たしかに」
私がそう答えるのは、3年ほど前にスコットランドを訪ねたとき、夏だというのに朝晩は冷えて、ストレートで飲むウイスキーがとてもうまかったことを思い出したからだ。

「では、絵の中の紳士がこれから飲む1杯は、この日の19杯目ということになるの?」
常連さんは、にやりと笑って答える。
「実はゴルフには19番ホールがあるという話があるんです。このホールではプレーを終えたゴルファーがウイスキーのグラスを傾けながら互いの健闘を称えあう。そんな話を、昔読んだことがあります」
マスターはグラスを磨く手を止めて、やはり、にやりと笑った。
「グレアム・ノウンという人が書いていますね。本のタイトルは『The Scotch』。私も翻訳で読みました。ちなみに『The Scotch』というのは1本のウイスキーの名前です。ノウンは、19番ホールで最高の乾杯を望むならこのウイスキーを用意すべきと書いています。飲んでみますか」
常連さんと私は同時に首を縦に振った。

しばらくしてマスターはウイスキーの注がれた2つのショットグラスと1本のボトルをカウンターに置いた。
『バランタイン17年』だった。
それまで饒舌だったふたりの客が黙り込んで香りを嗅ぎ、口に含んでは、うん、とか、ああ、とか呟き、グラスの中の液体が半分くらいになって、ようやくひとつ、大きな溜息をついた。
「これは逸品ですね」
と私。
「まさに"The Scotch"です。いつ飲んでもそう思わせる酒ですね」
と、常連さん。
魅惑の液体が残るグラスに手を伸ばすふたりに、マスターはこの酒のいわれを語ってくれた。
"The Scotch"の発売は1937年。日本でサントリーの角が生まれた年だが、当時すでに創業者ジョージ・バランタインの没後50年を記念しての発売だったというから、それだけを見てもバランタイン・ブランドの豊かな歴史を物語るものといえる。
さらに言えばこの銘酒、40種類にも及ぶ原酒を用いたブレンデッドウイスキーで、ブレンドするすべての原酒の熟成年数が17年以上。現在で5代目のマスターブレンダー、サンディー・ヒスロップ氏のもとで、日夜、徹底した官能検査を行ないながらその伝統の香味を守り続けている。The Scotchであり、The Whiskyとも言える逸品なんです……。
"The Scotch"の話を聞いている私は、スコットランドの牧草地を抜ける風や、ゴルフリンクの青々とした芝の匂いを、ふと想う。それを見透かしたかのように、
「バランタインとゴルフの縁も古いんです」
と、マスターは話を続ける。

バランタインの名を冠したゴルフトーナメントがイギリスの名門コースであるウェントワース・ゴルフ・コースで開催されたのは1960年のこと(写真参照)。 つまり、スコットランドから生まれて世界の男たちを魅了したゴルフと"The Scotch"との関係は50年以上になる。
そして現在では、バランタインがスポンサードするゴルフトーナメントは、『バランタイン・チャンピオンシップ』としてその伝統を受け継ぎ、なんと隣国コリア―韓国で開催されるという。
しかもこの試合、2008年より世界的なゴルファーがこぞって参加し、しのぎを削る欧州PGAツアーに加わっている。2011年も4月28日から5月1日まで、賞金総額約2億5000万円をめぐって、世界のトッププロが腕を競い合うことになっています……。
「行ってみたいですね、コリア」
「試合を見た後で、ギャラリーにも19番ホールがあっていいような気がします」
ふたりの客は早くも4月の予定などを頭に思い浮かべているのかもしれない。

バランタイン広告ポスター(1962年当時)

そこへマスターが、さらなる魅力を紹介した。
「昨年のチャンピオンはオーストラリアのマーカス・フレイザーという人なんですが、彼は優勝後にバランタインのサンディー・ヒスロップとコラボレートし、世界に10本しかない、値段のつかないブレンデッドウイスキーをつくっています。
その名も『The Championship Blend』。
ブレンドする原酒の熟成年数が最低でも38年という酒で、そのうちの1本はフレイザー氏に、また1本は、2011年のチャンピオンに贈られるらしいですよ」
さて、どんな酒なのだろう。"The Scotch"がもたらす深くて長い余韻に浸りながら、カウンターのふたりは思い巡らす。最高の技術と、それをトーナメントで発揮できる精神力と、一人にしか与えられない栄冠とを手に入れる強運の3つを兼ね備えた、まさに頂上の人にふさわしい1本であることは間違いないだろう。
その味わいを想像しながら"The Scotch"を飲めば、勝者を惜しみない賞賛で迎える人々の中に、自分もいるような気がする。
この、ひとときが嬉しい。スコッツたちが生んだゴルフとウイスキーという大人の喜びを分かち合うひとときが、何物にも変えがたいほど嬉しい。

バランタイン・チャンピオンシップについて

バランタインがスポンサーとなった『バランタイン・チャンピオンシップ』が2008年より欧州PGAツアーに加わりました。世界中から集まる参加プレイヤーは、熱狂的なゴルフファンも納得の多彩な顔ぶれ。2008年から毎年韓国にて実施。
今後も華やかに繰り広げられるプレイヤー達の熱い戦いから、目が離せません。

詳細は大会公式サイトにて

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