
ゆらり、京都
創業1918年。正統バーの、のれんを守る三代目マスター
「祇園サンボア」中川立美さんをたずねる。
 
ご存じ、「サンボア」は、正統バーの代名詞のような存在だ。はじまりは、大正7(1918)年、神戸の花隈に開店した。神戸のお店はなくなったが、のれんをわけたサンボアは、今、大阪に7軒、京都に7軒、そしてこの夏には、東京銀座に「ひ孫」のような新店が開き、西と東に11軒の灯がともる。
いわゆるチェーン店とは趣を異にするサンボアには、それぞれのお店にオーナーであるマスターがいらっしゃる。
「祇園サンボア」の中川立美さんはその一人。お祖父様の代から三代にわたって、サンボアののれんを受け継ぎ、守ってきた。(祇園サンボアは今年で33年目)
お店には、80歳をとうに越えてなお、矍鑠とした佇まいで、ハイボールを嗜まれるご常連もいらっしゃる。親子三代にわたるバーテンダーの、それぞれのハイボールの味を知る、幸せな紳士であらせられる。
 
中川立美さん、語る
京都の、こわさ
京都という街は、ある意味、こわいと思います。
お客さん同士、見ていないようでいて、よく、見てはりますよ(笑)。
何を見るかとえば、その人が、見えないところの基本に何を持っていていはるか
つまり、人の心のなかにあるものを、見ぬいてしまわれる。
自分の隣の席に腰掛けてウイスキーを飲んでいるこのお人は、果たして、きもったまがあって、飲んでおられるのか、どうか。そこを見る。
それは、こわいものですよ(笑)。けれどその半面、そういう人を見る目がおありですから、お客さん同士、意気投合なされると、そういう時には、かたい結びつきのような、深いおつき合いが生まれることもあるようです。
一見、つめたいようでいて、でも実は、あたたかいものが生きている。それが京都と、思います。
山口瞳さんの心遣い
入り口の、のれんですか?
はい、あの「サンボア」の文字は、作家の山口瞳さんの手になるものです(この頁の一番上写真)。
あれはもう、20年以上前のこと。うちの父が亡くなって、1、2年たった頃でした。その時、私はまだ、中学生。母が、見よう見まねで、父のあとを受けて、このカウンターで働きはじめておりました。
そのある日、山口先生が、「はい、これ」と、母に、わたしてくださったのです。
ご自宅で、筆をとられて文字をかいてくださったこののれんを、店までとどけてくださいました。
それ以来、ありがたく、かけさせてもらってます。
ええ、それまでは、この店に、のれんは、ありませんでした。おそらく、山口先生が、「ここには、のれんがあった方がいい」と、考えられたのでしょう。それに、先生は、優しい方だから、母を励ましてくださろうと、気をつかってくださったのです。
不思議なものです、今となっては、こののれんがないと、間が抜けて、店の入り口にはとても見えません(笑)。
 
中川家に伝わる、家訓
バーというのは、酒場でしょう。酒場というのは、お客さんが、つくってくださるもの。
私のできることは、ですから、「お客さん、喜んでくれはったら」と、それだけです。私ができる範囲ですけれど。
うちに見えるお客さんは、皆さん、ウイスキーがお好きな方が多いですね。
ビールを1とすれば、ハイボールは9。それくらいの割合で、私はウイスキーのソーダ割りをおつくりしています。
しかも、うちに見えるお客さんは、短い時間に、5、6杯、召し上がる。お強い方ばかりですね。
私ですか? うちの家訓に、「酒は売るものだ」というものがありますから、私はめっきり弱いです(笑)。
当店では、ソーダ割りはいつも、サンボアの特製グラスでおつくりしています。今夜は、バランタインの12年もの、どうぞ、ごゆっくり、お楽しみください。
祇園サンボア
| 住所 |
京都府京都市東山区祇園南側有楽町570 |
| 電話 |
075-541-7509 |
| 営業時間 |
18:00〜1:00(土0:00) |
| 定休日 |
月曜日 |

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